■舞台 いのうえ歌舞伎☆號『IZO』(青山劇場/2008.1)

もりたさん舞台を振り返るシリーズパート2。本日はIZO
そして、前回エントリにお星様をありがとうございました。以前書いた感想にお星をいただくなんて、なんか申し訳ないです。本当にありがとうございます。




安政元年(1854年)。身分制度の厳しい土佐の地で、足軽岡田以蔵森田剛)に剣を習う術などなかったが、そんな以蔵の運命を、郷士武市半平太田辺誠一)が変えた。武市は以蔵に自らの道場で剣術を学ばせてくれたばかりか、江戸へ剣術修行に随行させてくれると言う。「武市先生に、俺はすべてを捧げるぜよ」と、以蔵の目はギラギラと光った。
やがて以蔵は文久の世になって以降、土佐勤王党の面々と共に数々の要人の暗殺に携わり、「人斬り以蔵」と人々に怖れられ、幕末の暗殺者としてのみその名を馳せていく。そんな中、薩摩の人斬り田中新兵衛と親交を深めていくが、その親交が、以蔵が犬のように扱われ、棄てられる運命へと導いていくのだった。







「森田さん、カッコよかったなぁ…」


本日2回目の観劇。友人と別れ一人になってから、何度私はこのフレーズを呟いただろう。
そしてまた呟く。


「森田さん、カッコよかったなぁ…」


ダメだ。脳みそがイカれてる。完全にやられてしまった。
目の前に、以蔵が居た。
確かに表情は、ジン様のときとは大違いだ。ほとんどが苦悶しているか叫んでいるかで、その風貌も手伝って(コラ)、観ているこっちが切なくなる。
でも、そんな中でも、時折見せるあどけない表情、垣間見える照れたような笑顔に、ハートはキュンキュンする。


そして、舞台の大部分を占めていた苦悶を経て、最後に見せた、裏切られた無念さのこもった鋭い眼差しを思い出す。


「森田さん、カッコイイ…」


その瞬間、心の中でため息が出た。森田さんの演じた以蔵は、切なくてでもかっこよくて、そしてとてつもなく暗い煌きを放っていた。





な〜んてことを思ったのは、滅多にないことなので自慢させていただくと、友人名義のチケットが最前だったからだと思う。ビバ★人生初舞台最前列★
要は度真ん前で動く岡田以蔵森田剛を見た。
そしたらもう最高でした。えへ。
舞台的によかったのかは私には分からん。初見は全然ダメだったし。
まぁ、海外から戻って初めての舞台観劇、久しぶり過ぎて自分の視力の悪さを忘れ、そしてオペラグラスも忘れ、誰が誰だかちっとも分からず観てしまった私が一番悪いと思うのだが、感想が「想像したよりはよかった」レベルだったのだから。
ま、今日あの席で見て「ダメだった」なんて思うはずはないが、とにかくも、私的には「森田剛、やはり最高…」信仰が崩れることがなかったのでよかった。個人的に安心(笑)。


内容的には、暗い。とにかく暗い。
演者の笑いのセンスと演技力で、たまに笑いは起きるが、基本的には侠気と狂気。
ヲタ目線で観れば、現在幕末にダダはまり中の私は、森田剛が袴を着て腰には大小(刀)を差していたり、はたまたキレイなおべべを着たその姿は七五三のように可愛らしく(オイ)、しかも鞘は朱色だし(段々話がズレてる)なんて、そんな姿を拝ませていただいただけで、脳内アドレナリンは噴出、それどころか、殿様にひれ伏している武士の集団(INCLUDE 森田剛)を見るだけで涙が出そうな程萌えていたのだが(完全に脳の病気だが事実)、そういうところを除けば、基本的には、時代に翻弄される人々の現実を見せ付けられるだけのことだ。
容堂>半平太>以蔵という絶対に覆すことの出来ない関係は、切ないを通り越して見ている者に虚しさを与える。(どうでもいいが、演技力も容堂@徳馬>半平太@誠一>以蔵@剛ちん、かと。また要らんことを。)



その中でも、以蔵は惨め。ぶっちぎりで惨め。
信頼していた「師匠」に裏切られ、新しい自分への望みを託した「時代」にも裏切られた以蔵。
痩せ細って頬のこけた森田さんは、悲しいかな、そんな惨めで暗澹とした以蔵に、ドンピシャはまり役だった。


遠くから見た時は、そのハマリ役具合が、ハマリすぎている故、救いが無くて見ていて辛かった。
や、「志」を未来に遺す死に方はしてんだけど、最終的には途方のない無力感というか絶望感で、見ているこっちの気持ちが、より一層しんどくなる、というか。
ハマリ役かもしれんけど、この手の内容は、はまり過ぎて逆に辛い。救いようが無い。暗い。暗すぎて切なくなる。痩せ細ったその風貌が、切なさを倍増させる。そんなことまで思ったものだった。
だた、今日は、そんな中に、時折見せる笑顔や茶目っ気のある表情を見つけることが出来た。だから、気持ちにも救いがあるんだと思う。悲惨だけではない、人間としての以蔵も垣間見ることができたからこそ、辞世の際「最初から自分は人間だったのに、高みを望みすぎた」と、オノレを省みた以蔵にホロリとしたんだと思う。



そして、初見時、「あんなに叫びまわって大丈夫?」と親心で心配していた森田さんの喉は、予想通りと言ってはあれだが、やっぱりかなり潰れていた。
でも、言っちゃうと、その潰れた感が却ってよかった。悲しくなるほどの切実感が以蔵にあった。そして、妙にセクシーであった。(←所詮こんな女)
更に森田さんは小さかった。至近距離で観るたびに思い、いつもその都度新鮮に驚く。ナンだあの小さな生き物は(失礼な)。
しかし、その小さな生き物が、途方も無く男なのだ。時折、途方も無く色っぽいのだ。最後、毒入り酒を飲んで死にかけて、口の周りが血だらけになってる時、怒りを含んだその表情がイロっぽくて艶やかで、萌えすぎて白目をむきそうになった。(←だから所詮こんな女)


小さい大きいで。
やはりコレを書かずにはいられないだろう。以蔵は大きくある必要が無いので、今回森田さんは順当に等身大であったが、誠一@半平太、こちらは必要性の有無関係なく、何もかもがムダにデカかった。
体もデカけりゃ声もデカい。荒神に続き身長2メートル50センチ、そんな勢い。何であんなに色々デカいんだろう。至近距離で見た顔のインパクトも、なかなかのものであった。
その他、今回の舞台のお楽しみ★「生徳馬」も超悪そうで最高だった。
でも徳馬、2回観たが2回とも、カーテンコールの森田さんを気遣ってくださっていた。頭を撫で、肩をポンポンとたたき、皆と同じラインに居た剛くんの背中を押して、一列前に出す。
「徳馬〜剛くんを可愛がってくださってるのね〜」
ブイヲタなら誰しもそう思ったことだろう。





そんなこんなで、予想通りに「岡田以蔵」がハマリ役だった「森田剛」は、こういう引き出しもあり、そしてもちろん、こういう引き出しを開けてもイケるということも証明してくれた。けれど、正直、こういう引き出しは、あんまり開けて要らんという感じもする。引き出しがあること、イケることが分かったから、もうそれでいいわーみたいな。
同じハマリ役でも、勇気爛々敵に立ち向かう役とか、恋に生きる魔神の役とか、そういうのが見たいなぁ。ソレってジンのことッスか。お願いジーン!出て来てジーン!!(2008年バージョン)←ここに来て、まさかジン様が出てこようとは。



以下、脈絡なく記憶ログ。

■叫んでいる森田さんは、耳は真っ赤になり、手の血管がくっきりと浮き出ていた。「オトコだわ…」と、対象物まで1メートル圏内でほくそ笑めた私は、当代一シアワセな痴女だと思う。
■役者さん達が飛び跳ねると舞台がドンドンと揺れる。その振動たるや凄い。森田さんが飛び跳ねると、一応揺れた。ミニマムだわ…と微笑ましく思う瞬間であった。
■今回、初めて森田さんの生足の指を見させていただいた。気合が入ると手の親指に力が入り、ピンと伸びた親指がキレイに反っているのが森田さんだが、力が入った時は、足の指にも力が入っていた。いずれにせよ可愛らしい(着地おかしい)。
■しかしやっぱり、かすれた声の森田さんってのはとってもエロいと思うの。
■エロいと言えば、はだけた胸から見えるあばらは、近くで見ると「こんなに痩せちゃってー」とか切なくなるとかそんな気持ちは一切起きず、ただただ「うっわー・・・ステキ・・・やだ・・・森田さんエロい・・・うっわー」と思うだけのことであった。



以上。